小名浜の家

記憶を重ねる住まい

所在地:福島県いわき市
構造:木造(リノベーション)
竣工年:2023年3月
床面積:198.78㎡
設計:24設計室+設計室 海上
施工:リメイク
写真:西川公朗

福島県いわき市に建つ二世帯の平屋リノベーションです。 

敷地には以前醸造業を営んでいた際の古い蔵と時を経た佇まいが印象的な店舗・事務所、そしてそこに祖父母世代から住んでいた住宅が併設されていました。 

増改築を繰り返してきたため屋根形状が複雑化し既に雨漏りの症状があったこと、また耐震性が不十分であることから住宅部分を取り壊し新築することも検討しましたが、祖父が残した建物の記憶を少しでも残したいという建主の希望からリノベーションを選択することになりました。 

既存建物の状態と今後のライフスタイルに適応した建物性能を考慮し、今回は建物を骨組の状態にして耐震性・断熱性能を改善させるスケルトンリノベーションに加え、複雑化した屋根形状を整理するために住居ボリュームの減築・増築も含めた工事となりました。 

各世帯への十分な日照と通風の確保を考慮した結果、親世帯と子世帯を1つの玄関を交差部としてL字型となるよう配置しました。新たに生まれた共通の庭により緩やかに空間がつながり、お互い気を使いすぎない適度な距離感を保つことができます。 

内部空間は、壁面は白を基調としつつ床や天井の一部に経年変化の美しい赤松材を使用することで時間と共に味わい深い空間となるよう仕上げました。天窓から取り込んだ柔らかい自然光が廊下の絵画を照らす役割として機能するなど、空間が均質化することなく日常的な風景が空間を豊かにするように工夫しています。

既存時に縁側だった土間空間は日射のコントロールと通風を得られる中間領域となり、屋外空間を内部に取り込んでいます。床材には敷地の塀として使われていた大谷石を再利用し既存時の面影をさりげなく継承しています。


改修前の事務所と母屋

改修前の縁側